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サントリー登美の丘ワイナリー

世界を感動させる日本ワインを…サントリー登美の丘ワイナリー

2015-12-24

「世界を感動させる日本ワインを」という理念のもと、風土・品種の特徴を引き出すワイン作りを実践している、甲斐市大垈(おおぬた)の「サントリー登美の丘ワイナリー」にお話を伺いました。

 

登って美しい「登美の丘」恵まれた環境でのブドウ作り

登って美しい登美の丘でのブドウ作り

サントリー登美の丘ワイナリーの丘を登ると、そこには美しい景色が広がっています。雄大な富士山の姿と目の前に広がる甲府盆地。 「丘に登って見る景色がとても美しい」登美の丘ワイナリーの名前の由来となっています。登美の丘は、降水量が少なく、日照時間が長い、そして昼夜の寒暖差がある、さらには、火山性の水はけの良い土壌、ブドウ栽培には大変恵まれている所です。

「この土地の自然な甘さ・柔らかさのイメージを持ちながら、土地の持っている特徴を押し上げていく」、そんなワインづくりをしています。

 

100年以上の歴史があるワイナリー

山梨の中でも古い歴史があり、甲斐市では一番古いワイナリーとなります。

1909年の開設当時は、「登美農園」という名前でした。当時、中央線の線路を引き込む工事を請け負っていた小山新助が、この土地を竜王方面から眺めた時、「ドイツのライン川周辺の風景によく似ている……」と気付き、ブドウ栽培・ワインづくりを始めるため、土地を切り開きました。

その後、サントリーが1936年に経営を継承。当時、甘口ワイン「赤玉ポートワイン」を製造しており、登美の丘ワイナリーは赤玉の原料となるブドウ栽培の基地という位置付けでした。

 

ワインへのチャレンジ

~辛口ワイン~

1950年代半ばになると、甘口の赤玉ポートワインから、辛口のテーブルワインを作る方向に舵を切ります。
それまでは、甘口ワインづくりに向くアメリカ系品種のブドウを中心に栽培・ワインづくりをしていましたが、辛口ワインの製造を目指し、ヨーロッパ系品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シャルドネ」栽培の切り替えにチャレンジします。

なぜ、チャレンジしたのですか

今では、よく耳にする品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「シャルドネ」。
その当時の日本では、ブドウ栽培が盛んな山梨県内でも、ヨーロッパ系品種のブドウを栽培している場所はほとんどありませんでした。
その後、登美の丘ワイナリーのチャレンジは実を結び、ヨーロッパ系品種ブドウの大規模な栽培を始めた“先駆者”となりました。

日本古来の品種「甲州」

登美の丘 甲州 2014

甲州という品種のブドウがあります。これは日本古来の品種で、95%以上が山梨県で栽培されていて、戦後ずっとつくり続けている品種です。1980年代には、遅摘みで甘口の甲州を使って、おいしいワインができました。
2000年代には、皮に含まれるアロマに着眼して辛口ワインをつくり始め、フレッシュな辛口の味わいを引き出す魅力あるワインづくりにずっと取り組んでいます。

世界が驚いた!日本初・貴腐ワインの誕生

登美ノーブルドール2003

芳醇な香りと甘美な風味を併せ持つ、希少価値の高い貴腐ワイン。

登美の丘ワイナリーが辛口ワインづくりを志していた頃、この貴重な貴腐ワインを作っていたのは、フランスやドイツ、ハンガリーの一部だけでした。貴腐ブドウはそこでしか採れないと言われていたからです。

登美の丘ワイナリーで貴腐ブドウが発見され、1975年に日本で初めて収穫に成功。貴腐ワインが誕生しました。 「日本で貴腐が作れるとは……」日本国内だけでなく世界中の人々が驚き、とてもセンセーショナルなニュースとなりました。

登美の丘ワイナリーのワイン

登美 赤2010

1986年の発売以来、登美の丘ワイナリーのフラッグシップワイン「登美」。こちらは赤と白があります。また、スタンダードワイン「登美の丘」は、赤・シャルドネ・甲州があります。
※「登美の丘」はブドウの品種名が付いている

「登美の丘 甲州」にはスパークリングワインもあり、代表的なスパークリングワインの醸造法である「瓶内二次発酵」という方式を用いています。1本1本発酵させ、丁寧にオリを除いて手づくりしています。

 

ブドウ栽培へのこだわり

丘の一番良い場所だけで

登美の丘ワイナリーの総敷地面積は、150ヘクタール。その中で、丘の一番いい場所を使ってブドウを栽培しています。畑の広さは、25ヘクタール。東京ドームに換算すると約5.3個分になります。昔はもう少し広い面積があり、谷あいでも栽培していました。

サントリー 登美の丘 ブドウ畑

畑の広さには理由があるのですか

日本は、比較的雨が降る土地・気候ですが、ワインづくりには乾燥している方が向いています。以前栽培していた谷あいの地では、ブドウが水の影響を受けること がありました。水の影響を受けることで、ブドウが水っぽくなったり、軽くなったり……そんな味わいになってしまうのです。

栽培に適した良い土地だけ選んだ結果、現在の畑となったわけです。良いものを、25ヘクタールの畑でしっかり作っていきたい。そう考えています。

 

草花や植物 森と共生するワイナリー

畑の周りには、森があります。森はひとつの生態系。多様な植物、生き物が存在するというのは、ワインづくりにとって良い環境で、土壌にも反映されます。草が生えることで土が耕され柔らかくなり、細かい根が入っていきます。

環境やバランスを保つのも大事なことです。

伸びてきた草を刈りこんだら、土に戻して栄養にします。養分が足りないようなら、栄養たっぷりのマメ科の植物で調整。自然の営みの中で、生えてくる草花や植物と一緒にブドウを栽培しているイメージです。

この土地は、茅ヶ岳が噴火し、火砕流が流れてきたことによる火山性の土で出来ています。雨や水によって谷ができ、今の形状になりました。火山性の土のため、水が土地にどんどん滲みこんでいくのではなく、傾斜を伝って水がいち早く外に流れていく……。そういうメカニズムにより、土地に必要以上の水がないという状態が生まれます。

また、草がないところに雨が降ると、谷ができるがごとく削れていって土がなくなっていきますが、そうならないように土地を守るのが草。こうした理由からも、草が無いというのは考えられません。

特長を生かした栽培

垣根栽培

ブドウ栽培の方法には、大きく分けて棚栽培(棚式)と垣根栽培(垣根式)があります。

1909年の開設時、伝統的な棚栽培だけではなく、垣根栽培も試していました。その後、棚栽培を選択し、長い歴史において棚栽培を行っており、ヨーロッパ系品種の栽培に切り替えた1950年代半ばにも棚栽培でブドウを作っていました。
1984年、寒さによる害で枯れてしまったり弱ったりして、木を大々的に植え替えたことがあり、一部で垣根栽培を試し始め、2000年代に入ってからは垣根栽培の比率が増えました。

地形やブドウの個性・特長などを見極め、それに適した栽培方法をそれぞれ採用しています。

 

広大な風景の甲斐市

広大な風景の甲斐市(ドローンにて撮影)

甲斐市の北部・茅ケ岳の南麓エリアは、ブドウ栽培(ワインづくり)に向いている土地だと感じています。

夏は乾燥して作物が育ちづらい所ですが、もともとの桑畑があり、そこから果樹に切り替えて果樹地帯が形成されています。ワインづくりということを考えると、土地を活かし、栽培に向いている品種を選定して魅力・風土を感じてもらえるワインを作れる場所だと思うし、ワインとしての魅力のあるエリアではないでしょうか。

そして、何はなくとも富士山が見えるという素晴らしいロケーション。甲府盆地の景色が見えて、その先に富士山がそびえていて……。
南アルプスを中心とした広大な風景、景観も見どころです。目に入ってくる景観は日本を代表すると言っても過言ではないのでしょうか。

もっとこの魅力を知ってもらって、より多くの人に、「行ってみようかな」と思ってもらえたら。そう考えています。

 

登美の丘ワイナリーの楽しみ方

自社畑を見ていただき、「ブドウ栽培ってこうやるんだ」といった発見をしてみてください。
場内をご案内して歴史を説明して「あぁそうか」と思ってもらうだけでなく、この場所を感じてもらって、ワインを飲んで、「ワインってこうなんだ」という感動を知ってほしい。
今までは、たくさんのお客様に来てもらって、場内を案内して回ることに比重を置いていました。
今後は、ある程度自由に場内を見ていただき、ワインを何回もテイスティングしてもらって、美味しいと思ったら買ってもらって……という流れが理想です。徐々にシフトさせていっている最中です。

自社畑の見学は、甲斐市・ワイナリー・ワインづくりを感じてもらうにはすごく大切なこと。
蔵を見るよりも、自然の中のブドウ園を見てほしいそういう気持ちが強くあります。

まずは登美の丘ワイナリーの景色や、ここでどんなワインを作っているのかということを感じていただいて……そして、ワインづくりのおもしろさや違いなどを知ってもらえればうれしいです。

~ワインの飲み比べもおすすめします~

テイスティングセミナー

ショップにはここで作っているワイン以外にも、周辺の契約農家さんが栽培したブドウで作っているワインや、青森・山形・長野など、県外産ワインもあ りますので、いろいろ飲み比べてみることをお薦めします。栽培していくなかで得たことを元に、それぞれの風土を生かすということは、全国の各産地でも実践 していることですので、それぞれの違いを感じてほしいと思います。

登美の丘ワイナリーは、緯度36度の場所にあります。では、もっと緯度の高い北の地域で栽培されたワインはどんな味なんだろう、こことはどういう風に違うのかな、と比較して、試してみて、好みのワインを見つけてください。

 

甲斐市を、登美の丘ワイナリーを訪れる方へのメッセージ

とにかく、ここにきて、知ってほしい。
ここの空気や富士山が見えるロケーション、日本でこんないい景色が見られるところはそれほどないと思います。 単純に見て感じてもらいたい。日本のこの土地からこんなワインが生まれているんだということ、ワインってこうなんだということを素直に知ってもらいたいと思います。

~~取材を終えて~~
このワイナリーには、全国から年間約5万人のお客様が来られるとのことです。楽しんでいただきながら、お客様にワインづくりをお伝えしていく。お客様にワイナリーをご案内しワインも売っている、畑を持って、栽培し、収穫し、ワインを作って、販売して、といういわゆる「ワイナリー」。
日本のワインを知ってもらう、私たちのワインづくりを知ってもらいたい。ワインづくりに関わっている方々の、熱い思いが伝わってくるそんな場所でした。

サントリー登美の丘ワイナリー 渡辺様

取材させて頂いた、サントリー登美の丘ワイナリー 所長 渡辺 直樹様

見学ツアー・せミナーの予約先:
サントリー登美の丘ワイナリー
電話番号 0551-28-7311(電話受付時間 9:30~16:30)
〒400-0103 山梨県甲斐市大垈(おおぬた)2786
営業時間:9:30~17:00(最終入場16:30)
休業日:火・水曜日 ※8月~11月は水曜日のみ
場内施設メンテナンスに伴い2016年1月より休業中。
営業再開は、2016年3月26日(土)を予定。
URL http://www.suntory.co.jp/factory/tominooka/

 

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